「天才!志村どうぶつ園」~被災犬「メイ」と「茜さん」の絆物語~お話します。

「天才!志村どうぶつ園」で放送されました

~被災犬「メイ」と「茜さん」の絆物語~をお話します。

一人の少女「茜さん」

彼女は、高校時代、友達を上手く作ることができず、学校でも家でも、いつも一人でいることが多かった。すべてのものに対して心を閉ざしていた。

「どうせ私なんて……」

 一人で海を見つめていたある日、一匹の犬、ラブラドールレトリバーが寄ってきた。

「あっちに行け!」

しかし、一向に離れないその犬。
近くにあったボールを遠くに投げた。

「どこかに行ってしまえ!」

ボールとともに消えた犬。
ところが、その犬は、ボールを口にくわえて、茜さんの前に現れたのだった。

その犬を家で飼うことになった。
茜さんにとってその子は、初めてできた親友になった。

名前は「メイ」

やがて高校を卒業した茜さんは、親元を離れてメイと二人で生活することになった。

外出する時にはいつも

「待っていなさい」

とメイに言いつけた。
どんなに遅く帰ろうともメイは、必ず、出かけたときと同じ姿、場所で待っていた。
彼女にとって、そんなメイとの暮らしが、心の支えになっていた。
固い絆で結ばれていたのだった。

しかし……
3月11日、あの「東日本大震災」が起きた。

どうにか倒壊は免れ、二人とも無事。

しかし、停電、断水……茜さんは、コンビニに必要な物を買いに出かけることにした。

家を出ようとして、いつものようにメイに

「待っていなさい」

と言いつけた。

メイは、いつもの様子と違う。
いつもならば、大人しく言うことを聞いて待っているメイだ。
しかし、異常なまでに吠え続ける。
出かけようとする茜さんの服を引っ張り、必死で止めようとする。

彼女は

「しつこい! 待っていなさい」

強い口調でメイを振り払った。
家の中で吠え続けるメイ。

そんなメイに、大津波が襲い掛かった。
茜さんは、そのまま非難所に逃れた。
避難所から、何度も何度も、メイのいる家に行こうとしたが、家のある町は閉鎖され、行くことができなかった。
ようやく大地震から2日経った日、家のある町に行けることになった。

しかし、家は跡形もなく、なくなっていた。
瓦礫の山。

「メイ……どうかメイ……」

瓦礫の山を掘り起こした。
しかし……
絶望的な気持ちになった。

「どんな時でも、自分を待っていてくれたメイ……」
「メイ……もうメイは生きていない……メイ、メイ、メイ……」

メイにかけたあの最後の言葉。

『待っていなさい』
「ある言葉を言わなければ……メイが自分を引き止めるのを聞いていたら……」
「メイを置き去りにして、自分だけ助かってしまった」

茜さんは、メイへの弔いの気持ちをつめて、メイのイラストを描いたビラを避難所に貼った。

「犬を探しています」
と。

すると、すぐに連絡が来た。

「メイが生きている!」
期待をこめて会いに行った。
しかし、メイではなかった。
何度も何度も、期待をして会いに行っては裏切られる日々が続いた。

「もう、メイの生存は絶望的だ……」

そんな時間が流れる中、連絡が入った。

「どうせ、また違っているに違いない」

ところが……Photo

犬が、茜さんを目掛けて走ってきた。

「メイ?!」

「メイだ!」

茜さんの住む町一帯は、遠く離れた場所まで流されていた。
彼女の住んでいた家は、家ごと流され、メイはその家の残がい付近で、ずっと誰かを待っていたという。

決して、その家から離れようとせず。

決して、諦めることなく待ち続け。

食べるものもなく、泥だらけのまま、自分の命がなくなるのもいとわずに……。

二人は、強く抱き合った。

「待っていなさい」

という茜さんの言葉を信じて、茜さんと再び会えることを信じて、待ち続けたメイ。

メイは、奇跡の再会を果たしたのだった。